「貧乏」をテーマにした作品集「貧乏まんが」を読みました。
この本に掲載されている作品は以下。
- 「リアリズムの宿」つげ義春
- 「きなこ屋のばあさん」つげ忠男
- 「貧乏神」水木しげる
- 「トキワ荘物語」赤塚不二夫
- 「大バーサンの歌悲し」松本零士
- 「ある雪の夜の物語」水野英子
- 「いのち売ります」辰巳ヨシヒロ
- 「赤貧」永島慎二
- 「おせん」楠勝平
- 「スリップ」池上遼一
- 「灯」鈴木翁二
- 「アギャキャーマン」谷岡ヤスジ
- 「バイトくん」いしいひさいち
- 「自虐の詩」業田良家
- 「フルーツ宅配便」鈴木良雄
- 「ホットケーキ」うらたじゅん
- 「長い道」こうの史代
昔のマンガが多めですが、2000年以降の作品もチラホラあります。
つげ義春がダントツ
この中で、最初に掲載されている「リアリズムの宿」(つげ義春)がダントツに面白いです。
旅先(取材先)で泊まった宿の話。淡々としたエッセイ風の作品で、落ちもなんにもないけど、一気に引き込まれます。
絵も特別に上手いとは言えないのに、まったく古さを感じさせない。
正直言えば、この本の中で「面白い」と思ったのは、つげ義春だけでした。
他の作品は、どこか作為を感じてしまう。まず作者のエゴがあって、「読者にサービスしてやろう」という作為があって、そして商売として「面白いものを描こう」という意図。作品からそういうものが感じられてしまうのです。あらゆるマンガに言えることですが。
だからこそ、大人になるとマンガに興味がなくなるのかもしれません。マンガ特有の作為を感じてしまうからだと思います。
しかし、つげ義春だけは、そういう作為が感じられない。商売のために「面白いものを描かなきゃ」という意図がない。登場人物にエゴがあったとしても、作者がエゴを押し付けてこない。
だから、つげ義春だけは、40年たっても50年たっても、まったく古さがなくて面白い。
日本の漫画史において、つげ義春は別格の存在だと思いました。
ちなみに、水木しげるは、貧乏をテーマとしたもっと面白い作品がいくらでもあります。もしかしたら、私が知らないだけで、他の漫画家もそうかもしれません。いまいちな作品ばかり選んでいるような気がします。
この本の選考って「つげ義春」を引き立てる意図があったのでしょうか(笑。
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