映画「ネジ式」の感想

映画

U-nextで映画「ネジ式」を観たのでメモ。

1998年公開。つげ義春の漫画を映画化。石井輝男監督脚本。浅野忠信主演。

いやー、すごい映画を観てしまったという印象。

この映画は、つげ義春の「別離」「もっきり屋の少女」「やなぎや主人」「ねじ式」をつなげて一つの作品にしています。

映像化に間に合いました

まず、つげ義春の漫画をかなり忠実に映画化していることに驚きました。

石井輝男監督は、それだけ原作にパワーがあることを認めたのでしょう。つげ義春へのリスペクトがあったのだと思います。

漫画の雰囲気が実によく出ています。(丹波哲郎のシーンなど、若干の遊びはありますが、この部分も私は好きです)

「もっきり屋の少女」の部分は、つぐみさんが好演していて、現在では映画化不可能でしょう。いろいろな意味で。

今よりメディアが自由だった1990年代に映画化しておいて本当に良かった。

妄想と現実を通底するエロス

この映画は、つげ義春の漫画をただ忠実に映像化しただけかといえば、そうではないです。映画だから可能な前衛的な表現になってます。

最初の最後に挿入されるエロスに満ちた舞踏のシーン。これなどは、妄想・幻想がエロスに満ちていることを表現しています。

こういった表現は漫画では無理です。映像だから可能な表現。

妄想・幻想がエロス(生の欲動)に満ちているいっぽうで、現実はといえば、どこまでも侘(わび)しい。

誰の人生でもそうではないでしょうか。この舞踏のシーンは、映画を観たあとに思い出すと圧倒されます。

つまり、妄想・幻想は、エロスに満ちた激しい欲動で脈打っている。しかし、現実はエロスがあるけど、どこまでも侘しい。

人間存在をこれほど赤裸々に表現した映画があったでしょうか。

この映画全編を通して、つげ義春漫画の秀逸なエピソードとともに伝わってきます。

最後の「ねじ式」のエピソードで完全に幻想と現実が混在します。そして最後の舞踏シーンへとつながる。

いやー、これはすごい傑作映画です。もちろん、つげ義春が原作だから可能になったと同時に、石井輝男監督だから可能になった映像化。

たぶん、私が死ぬまでは30回くらいは観ると思います。私が今まで観た映画の中で、5本の指に入る傑作映画です。

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