映画「無能の人」の感想

映画

U-nextで「無能の人」を観たので感想をメモ。

1991年公開の竹中直人監督・主演映画。つげ義春の漫画が原作。

精神的に不調なときに、なぜかつげ義春の漫画が読みたくなります。今回は映画を観ました。以前に観たような記憶もありますが、20年以上前だったのか内容は憶えていません。

ちなみに、漫画の方は何度も読んだことがあり、内容はほぼわかっていました。

いやー、面白い。わびしい感じがよく出ています。つげワールド全開です。

妻役の風吹ジュンさんがチャーミングなので、観ているほうとして救われます。

なんで中途半端なことをしてしまうのか

主人公はつげ義春本人と重なっていて、以前は評価の高かった漫画家だけど、お金には困っているという。そして、なにより、描くことができない。

石売りなどという不毛なことをはじめてしまう。

最後には、多摩川の渡し橋を作るなどという不毛な金儲けに希望をたくそうとする。

映画ではセリフで少し触れられるだけですが、カメラ修理転売などあれこれ手を出してしまうわけです。(漫画にはこの商売の話の回もあります)

せっかくの漫画に打ち込めない。妻も編集者も望んでいるけど、どうしても描けない。

この心理は芸術家だけではなく、誰もが憶えがあると思います。わかっていても、できない。そして、横道にそれてしまうのです。不毛なことにエネルギーのはけ口が向かってしまう。

しかし歴史に残るのはつげ義春

つげ義春の漫画は、今読んでもまったく魅力が失われていません。ものすごく面白い。

他の当時の人気漫画は、今読んでみるとほぼ魅力はないわけです。

漫画家として金を稼ごうと思えば、とにかく描き続けるしかないです。そうやって食っていくために生み出された数々の人気漫画は、時間とともに消えていく消耗品です。

そうではなく、自分の血で描かれたようなつげ義春の漫画は、それだけに寡作だったけど、今でも魅力を保っているわけです。

つくづく、真の芸術家は報われないと思います。

(実際のつげ義春の生活は、そこまで悲壮感はなかったという話もあります。繰り返し原稿が再出版されて生活を支えていたので)

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