u-nextで福田村事件を観たのでメモ。
2023年公開、森達也監督の映画「福田村事件」。
関東大震災のときに多くの朝鮮人や社会主義者が殺されました。そのような状況の中、千葉県の福田村で、薬売りの行商団が朝鮮人に間違えられて9人(10人)が殺されるという事件が起きました。その事件を扱った映画です。
とても重いテーマですが、だからこそどのように描かれているのか気になりました。
映画として完成度が高い
映画を観る前は、勝手に「低予算映画だろう」とイメージしていました。映画製作前にクラウドファインディングをやっていたり、ドキュメンタリーで著名な森達也さんが監督しているため、なんとなくそんなイメージを持っていました。
観てみたら、まったく違います。俳優陣にしても、衣装・セット・シーンにしても、お金をかけて気合を入れて撮られています。低予算で済ませたようなシーンがひとつもありません。
純粋に映画としての完成度が高いです。大正期の千葉の村の雰囲気が伝わってきて、この時代を身近に感じられるようになりました。村の日常(人間関係)を扱ったシーンは、ものすごく満足感が高いです。
映画として完成度は高いですが、何度もこの映画を観る気力はありません。差別シーン、震災後に朝鮮人や社会主義者が殺されるシーン、そして福田村事件のシーンが重いです。
特に、福田村事件のシーンは、集団虐殺の狂気をこれほどストレートに描いた作品は珍しいと思います。映画史に残るレベルのシーンだと思います。
映像の力を知る
福田村事件については初めて知りましたが、関東大震災のときの朝鮮人や社会主義者の虐殺についてはあちこちで読んだことがあります。
しかし、今回、映像をみて、虐殺を起こしてしまう集団ヒステリーのような狂気を目の当たりにしました。犠牲者が直面した恐怖があまりに胸に迫ってきます。
「殺された」という文字で事実を知っていても、なかなか当時の状況が理解しづらいです。映画で観ると、その凄惨な状況がよくわかります。
福田村事件についても、wikipediaでは「自警団に暴行され、9名が殺害された事件」とあります。この文字を読んでもまったく伝わりません。
映像で見てはじめて、その怖ろしさを知ることになります。
恐怖心が狂気を生み出す
罪もない人を虐殺してしまう人々が今の日本と無縁だとは思えません。
当時、加害者となった人々は、今の日本の町中を歩いている普通の人々となんら変わることはありません。
しかし、未曾有の大震災という不安が襲いかかり、抑圧していた人々に復讐されるという恐怖心をもったときに何かが壊れました。
さらに、新聞各紙が朝鮮人への恐怖心を煽ったこと、政府が朝鮮人を警戒するように通達を出したのも罪深いことです。
こうなると、普通の人々が集団ヒステリーに陥って、信じられないような行為に走ってしまう。
日本に限らず、どんな社会でも起こり得ることです。これは人間社会のリスクだと考えたほうがいい。
日本人としては直視するのはつらい事実ですが、絶対に観ておくべき映画だと思いました。
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