映画「ノマドランド」の感想

映画

Amazonプライムで、ノマドランドを観ました。

この映画は、ノンフィクション「ノマド: 漂流する高齢労働者たち」が原作となっています。

経済苦で家を失った高齢者たち。彼らは自家用車で寝泊まりしながら、働き口を求めて全米を放浪していた。

米国の過酷な現実を示しています。将来、日本を含めて、どんな国でも避けられない現実になると思いました。

観たあとにものすごい感動に襲われました。この数年で観た映画の中で、1,2の傑作です。

ドラマが素晴らしいだけでなく、映像が美しいので映画館で観たかった。

放浪者の話ではない

定住せずに車で放浪。短期労働を繰り返す。・・・

こう聞くと、「そういうタイプの人たちっているよね」という先入観をもたれるかもしれません。

一部にはそういう気質があって、昔からそういう人生を送っている人々はいます。(映画の中で、そのような若者も登場します)

しかし、この映画で主にとりあげられている高齢者たちは、かつては定住し、家族もいて、それなりの専門職についていたりします。

この映画の主人公ファーンも、その教養の高さから高等教育を受けていると推測され、かつては街の臨時教員でもあり、知り合いの子供から「先生」と呼ばれていたりします。

しかし、夫と死別し、街を支えていた産業が消え、街全体がゴーストタウンになるという時代の流れがあり、気がつけばそのような立場に陥っていたのです。

これは紛れもない先進国の現実です。経済状況の変動が激しい現代は、先はどうなるかわかりません。

心の傷

ノマド生活を送っている人は、同じ立場の人々が集まる場所で交流します。

そして、各自の抱えている心の傷が明かされます。

しかし、その心の傷にたいする向き合い方は各自が異なります。主人公ファーンは、このような交流の場所も「自分の居場所ではない」と悟ることになります。

しかし、他者との交流によって、自分が抱えている執着心に気づいて、何かをふっきれることができたのかもしれません。

演技が素晴らしい

この映画は、ドキュメンタリーのように淡々と主人公ファーンの様子を映したシーンが多いです。だからこそ、役者の実力によって映画の印象はまったく変わってしまうはず。

主人公ファーンを演じたフランシス・マクドーマンドが素晴らしいです。

ノマド生活の孤独、気楽さ、不安、人生の達観。すべて自然体の表情でにじみ出ています。

この女優さんでなかったら、この映画は成立していなかったと思います。

私は同じ映画を何度も見るタイプではないですが、今後の人生で何度もこの映画を見返すような気がします。

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